改修の計算ツールには、床面積の欄がない

「改修だと、いくらくらいになりますか」

3階建ての建物で、建築23枚・設備18枚、あわせて41枚の改修図面を描くとします。実施設計の手間は527.47人・時間。新築の事務所1,000㎡で実施設計だけを頼んだときの、半分弱です。

この数字を出すのに、床面積は使っていません。

前回までは、新築の設計を床面積から数えるところを分解してきました。今回は、作りかけのツールでまだ押せないままになっている「改修設計」のタブです。

目次

改修は、表から引けない

新築の手間は、床面積を1本の式に入れて出しました(床面積の記事)。改修では、これが使えません。告示第8号の説明資料に、はっきり書かれています。

略算方法は、建築物の新築を行う場合が前提。このため、増改築・用途変更等の場合の報酬算定に適用することはできない。

改正業務報酬基準説明会説明資料(国土交通省)

代わりに国の積算要領が採っているのが、図面の枚数です。

  • 建築改修:13.567人・時間 × 換算図面枚数
  • 設備改修:10.233人・時間 × 換算図面枚数
  • 換算図面枚数:図面1枚ごとに、複雑度(簡易0.6/標準1.0/複雑1.4)とCADデータ影響度(0〜1)を掛けたもの

この式の意味は、改修の設計料の記事で書きました。工事費ではなく、描く図面の枚数と、その1枚の厄介さで決まる。今回は、それをツールの画面にするとどうなるか、の話です。

入力欄が、面積から一覧に変わる

新築のタブの1段目は、類型と床面積でした。改修のタブには、そのどちらもありません。あるのは図面の一覧です。図面の名前、枚数、複雑度を1行ずつ並べていきます。

白紙から並べるのは大変なので、前の版には「標準図面ひな形」のボタンを置いていました。押すと、よくある改修図面が一式入ります。

区分主な図面枚数換算図面枚数
建築現況・改修の平面・立面・断面、矩計、建具、仕上表、構造平面・詳細、特記仕様書2325.0
設備電灯コンセント、動力、弱電、受変電、給排水、空調換気、機器表、特記仕様書1818.4

換算図面枚数が枚数より多いのは、矩計図や建具詳細図などを「複雑(1.4)」にしているからです。ここから、冒頭の527.47人・時間が出ます。

一覧には、現況図も入っています。現況の平面・立面・断面で6枚です。

★本人:現況図を「描く図面」として枚数に入れるか。実測や図面の復元は追加業務なので、二重に数えていないか(実務でどう扱っていたか、1〜2行)

コルクボードに、細長い白い札が一列に縦に留められている

同じ名前の係数が、2か所で違っていた

全国版に移す前に、前の版の改修タブを分解してみました。そこで1つ、食い違いが見つかりました。

CADデータ影響度です。画面の端にある要領の参照ページには、「新規0.60/一部使用0.80/全部使用1.00」「発注者提供の場合 0.55/0.70/0.85」という6つの値の表が載っていました。ところが入力欄のプルダウンは「なし1.0/若干0.9/中程度0.8/大きい0.7/非常に大きい0.6」の5段階。同じ名前の係数に、別の数字が並んでいたわけです。

★本人:参照ページの6つの値はどこから来たものか(県の要領か、別の資料か)。使っていて気づいていたか(1〜2行)

もう1つ、置き方も違っていました。国の要領は、影響度を図面1枚ごとに設定できるとしています。前の版は、一覧全体に1つの値を掛けていました。

既存のCADデータが使えるのは、たいてい現況図のほうです。改修平面図や詳細図は、データがあっても描き起こす部分が大きい。全体に1つの値を掛けると、データの効かない図面まで一律に軽くなります。

上の列は太い刷毛で5枚まとめて同じ色が塗られ、下の列は細い筆で2枚だけに色を差している

影響度を、行に持たせる

全国版では、影響度を一覧の各行に移すことにしました。プルダウンは置かず、0〜1の数字を行ごとに入れます。根拠のない段階の名前(若干・中程度)を付けるより、何を入れたかが行に残るほうが、後から説明できるからです。

計算の中身は、前の版とほとんど変わりません。1行ずつ換算図面枚数を出し、係数を掛けて、丸めてから足します。

function renovationHours(rows, rate){       // rate:建築 13.567 / 設備 10.233
  let sheets = 0, hours = 0;
  rows.forEach(r => {
    const s = r2(r.count * r.complexity * r.cad);  // 1行の換算図面枚数
    sheets = r2(sheets + s);
    hours  = r2(hours + r2(rate * s));            // 行ごとに丸めてから足す
  });
  return { sheets, hours };
}

行ごとに丸めるので、まとめて掛けた値とは少しずれます。建築の換算25.0枚を一度に掛けると339.18、行ごとだと339.17。設備も188.29と188.30で、0.01ずつ逆を向きます。端数の記事で書いたのと同じで、どちらが正しいかではなく、どちらで数えたかを画面に出しておくことにしています。

改修タブの図面一覧。現況図の3行だけ影響度0.50、ほかは1.00

★スクショ:改修タブの一覧。現況図の3行だけ影響度0.50、ほかは1.00(全国版の改修タブ実装後に撮影)

影響度の置き方で、どれだけ動くか

同じ41枚の一覧で、影響度の置き方だけを変えてみます。金額は技師(C)、諸経費率1.1、技術料等経費率0.15で出した参考値です。0.50は説明のための仮の値です。

影響度の置き方業務人・時間数業務価格(参考)
全部1.0(データなし)527.476,767,000円
現況図6枚だけ0.5486.776,245,000円
全体に0.8(前の版のプルダウン)421.975,413,000円
全体に0.6(同)316.494,060,000円

行ごとに置くと、下がるのは8%ほどです。全体に0.8を掛けた場合の20%とは、だいぶ違います。

前の版では、「CADデータあり」と聞いてプルダウンを1段下げるだけで、この差が出ていました。どの図面のどのデータを使えるのかを確かめないまま、です。

影響度で下がらないもの

改修でも、積算業務は追加で数えます。前の版は、実施設計の人・時間×0.21としていて、このときの実施設計の人・時間は、影響度を1.0として出し直していました。国の要領(第2章3.3)も同じ定め方です。

CADデータがあっても、数量を拾う手間は減らない、という考え方です。上の4通りのどれでも、積算業務は110.77人・時間で変わりません。新築の積算業務(×0.25)とは率も違います。

自分の見積に当てはめるなら

改修の見積を1つ開いてみてください。

そこに、図面の一覧は付いていますか。

改修の設計料は、図面の一覧があれば、誰が計算しても同じところに戻れます。一覧がなく「CADデータがあるので○割引き」とだけ書かれていたら、どの図面のデータなのかを聞いてみる価値があります。

頼む側が渡せるデータを持っているなら、それが効くのは現況図の数枚だということも、覚えておいて損はありません。

一覧の紙がクリップで留められた封筒と、何も付いていない封筒

次は、監理・耐震・解体です。同じ骨組みに、どの物差しを当てるかを並べます。


参照:官庁施設の設計業務等積算要領(令和6年改定・令和6年3月26日 国営整第210号)第2章3.1〜3.3/改正業務報酬基準説明会説明資料(国土交通省)/設計業務委託等技術者単価(令和8年3月から適用)

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