計算ツールの6つのタブのうち、解体だけ骨組みが違っていた

「解体だと、いくらくらいになりますか」

工事費3,000万円の解体の設計を、前の版のツールに入れてみます。設計価格は93万円。工事費を6,000万円にすると、156万1千円になります。

工事費が倍になると、設計料は1.7倍。解体の設計料の記事で「工事費に連動させてはいけない」と書いたのと、自分のツールが逆を向いていました。

前回は、改修のタブを図面の一覧に作り替えるところでした。今回は残りの3つ、工事監理・耐震・解体です。3つを並べてみると、数え方の違いより先に、計算の通り道が1本だけ違うことに気づきました。

目次

6つのタブは、同じ出口を通る

前の版のタブは6つありました。新築設計、改修設計、工事監理(新築)、工事監理(改修)、耐震、解体です。

それぞれの入口は違います。床面積を入れるタブもあれば、図面の一覧や工期を入れるタブもある。ただ、どれも最後は人・時間を1つの数字にして、同じ出口に渡していました。全国版では、その出口をこう書いています。

function toFee(hours, unitDay, misc, tech, special){
  const unitHour = unitDay / 8;
  const A = floor(r2(hours) * unitHour);          // 直接人件費
  const B = floor(A * misc);                       // 諸経費
  const C = floor((A + B) * tech);                 // 技術料等経費
  const D = special || 0;                          // 特別経費
  const Y = floor((A + B + C + D) / 1000) * 1000;  // 業務価格(千円止め)
  return { A, B, C, D, Y };
}

人・時間を単価で金額にして、経費を2段乗せ、千円で止める。これが骨組みです。違うのは、そこに渡す人・時間をどう数えるか。物差しのほうです。

タブ人・時間を何で数えるか国の基準に式があるか
新築設計床面積(設計の係数)ある
改修設計図面の枚数ある
工事監理(新築)床面積(監理の係数)ある
工事監理(改修)月あたりの時間×工期ない(勘案して算定)
耐震床面積(耐震の係数)ある(告示第670号)
解体工事費から人・日を引く表ない

新築の工事監理は、新築設計と同じ式に別の係数を入れるだけなので、ほとんど書くことがありません。残りの3つは、それぞれ少しずつ癖があります。

同じ形の出口に向かって、太さも材質も違う6本の管が集まっている

耐震は、違う経費率がほぼ同じところに落ちる

耐震のタブは、物差しは素直です。床面積を式に入れて、診断と改修設計の人・時間を出します。

違うのは経費率でした。新築は諸経費1.1・技術料等経費0.15。耐震は諸経費1.0・技術料等経費0.20が標準です。耐震診断の記事でも、経費の倍数は告示第670号の1.0を使いました。

経費は2段で掛かるので、掛け合わせて比べてみます。

  • 新築:(1+1.1)×(1+0.15)=2.415
  • 耐震:(1+1.0)×(1+0.20)=2.400

数字は違うのに、行き着く先はほぼ同じです。1,000㎡の耐震診断(377.57人・時間)で金額にすると、耐震の率で481万4千円、新築の率で484万4千円。差は3万円でした。

それでも、出口に経費率を固定では書いていません。toFee が経費率を引数で受け取るのは、耐震のタブが別の値を渡すからです。

改修の監理は、物差しを自分で作っていた

改修の工事監理について、国の要領は式を持っていません。工事監理の記事で引いたとおり、工期・工事の内容・規模・施工条件などを「勘案して算定する」とだけ書かれています。

前の版は、ここを積み上げにしていました。現場巡回、施工図の検討、打合せ、支払いの審査、記録の事務。それぞれ月に何回、1回何時間かを入れて月あたりを出し、工期の月数を掛けます。着手前の準備や竣工検査のように、工期を通じて1回きりの業務は別に足します。最後に施工条件係数(1.0〜1.3)を掛けます。

初期値のまま工期だけ動かすと、こうなります。

工期業務人・時間数業務価格(参考)
6か月184.002,360,000円
9か月256.003,284,000円
12か月328.004,208,000円

月あたり24時間に、単発の40時間。工期が延びれば、そのぶん素直に増えます。

工事監理の記事では、新築の監理には工期が入らず、改修の監理は工期を勘案してよいが式がない、と書きました。前の版は、その空いたところに自分で式を置いていたことになります。

気になるのは2つです。1つは初期値。巡回月4回・1回2時間といった数字は、基準のどこにも載っていません。

元にしていたのは、現場の週の日程です。工程会議や材料の検収は、たいてい週単位で決まります。工期が120日なら17週ほど。そこから準備工と完成前の期間を引いた15週くらいが、監理が通う期間になります。その間、週に4時間ほど。内訳は工程会議が2時間、立会いと巡回で2時間、という感覚でした。

基準の数字ではなく、現場の暦から割り出した数字です。だから初期値として画面に置いておくと、根拠のある値に見えてしまう。

もう1つは向き。月数を掛ける形だと、工期が延びたら自動で増えます。工事監理の記事で引いた事務連絡は、工期が延びたこと自体は委託料を変える根拠にならない、という立場でした。

全国版では、積み上げの枠は残し、初期値は外すことにします。代わりに、週あたり何時間を何週、という入れ方を選べるようにする。行ごとに何回・何時間と入れた跡が残れば、式がなくても説明はできます。工期を掛けるかどうかは、行ごとに選べる形にしたいと考えています。

壁のカレンダーの各月の欄に、色の違う付箋が数枚ずつ貼られている

解体だけ、出口が違う

解体のタブを開いて、骨組みそのものが違うことに気づきました。

入口は工事費です。工事費と建物の類別から、表で標準の業務人・日数を引きます。そこに依頼度、業務比率、委託率を掛けて直接人件費を出し、経費を乗せ、最後に基本設計・実施設計率を掛けて千円で止めます。

  • 単位が人・時間ではなく、人・日
  • 人の手間を、工事費から引いている
  • 率が、経費を乗せたあとにもう1回掛かる

toFee を通っていないのは、6つのうちこのタブだけでした。前の版は、手元にあった要領の表をそのまま持ってきていたのだと思います。

数字を並べると、工事費との連動がはっきり見えます。

工事費標準業務人・日数設計価格(参考)人・時間に直すと
1,000万円25407,000円45.36
2,000万円42673,000円75.00
3,000万円58930,000円103.56
6,000万円991,561,000円173.92

(第2類、依頼度0.40、委託率0.9、実施設計率0.7。最後の列は直接人件費を時間単価で割り戻したもの)

解体の記事では、労務単価がほぼ倍になったこと、石綿があれば処理費が本体の倍以上乗ることを書きました。この表だと、その分がそのまま設計料に流れ込みます。処理費が膨らんだ理由は養生と測定で、設計の図面が増えたからではないのに、です。

では、この表の金額は実感と合っていたか。正直に言うと、合っているかどうかを確かめる手がかりがありませんでした。外注の見積を何社か取っても、返ってくる金額は全部違う。中には、何を数えた結果なのか読み取れないものもありました。

表で出した数字にも、見積で返ってきた数字にも、手間の中身が書かれていない。比べようがなかった、というのが近いと思います。

1本だけ、他と違う方向から別の扉に入っていく管

全国版では、解体を空欄から始める

国の基準に、解体の式はありません。それなら、ツールの画面でも「引ける表がない」ことをそのまま見せることにします。

解体のタブには工事費の欄を置かず、人・時間を行ごとに積む欄だけを置きます。何に何時間かかるかを入れて、合計を新築と同じ出口に渡します。

行の見出しは、実際に手間がかかったところから決めました。

1つは、図面のない建物の図面起こしです。壊す数量を拾うには図面が要る。ところが壊してしまえば、その図面は最終的に何にも使われません。手間はかかるのに、成果として残らない業務です。

2つ目は、担当者によって考え方がぶれること。どこまで調べるか、どこまで描くかが人によって違う。式がない業務では、このぶれがそのまま金額の差になります。外注の見積が全部違ったのも、たぶんここです。

3つ目は、立会いの手間。解体は現場で確かめることが多く、図面の上では数えにくい時間がかかります。

この3つに、現地の調査と石綿の事前調査結果の確認を加えた5行を、最初の見出しにします。ぶれが出る業務だからこそ、行ごとに何時間と残しておく。担当者が変わっても、どこで考え方が違ったのかを後から追えるようにするためです。

そうすると、物差しは3種類に減ります。床面積の式、図面の一覧、行ごとの積み上げ。改修の監理と解体は、同じ積み上げの部品を使い回せます。

const RULERS = {
  shinchiku: areaHours,     // 床面積の式(設計の係数)
  kaishuu:   drawingHours,  // 図面の一覧
  kanri:     areaHours,     // 床面積の式(監理の係数)
  kanriKai:  stackHours,    // 行ごとの積み上げ
  taishin:   areaHours,     // 床面積の式(告示第670号)
  kaitai:    stackHours,    // 行ごとの積み上げ
};

タブが6つでも、出口は1つ。違うのは、そこに何を渡すかだけ。今の全国版はまだ新築のタブしか動いていませんが、残りはこの形で足していきます。

自分の見積に当てはめるなら

解体か、改修の工事監理の見積を1つ開いてみてください。

金額は、工事費の何%、あるいは工期の月数で決まっていませんか。

どちらも国の基準に式がない業務なので、決め方は見積を出した側に任されています。人・時間の内訳が付いていれば、何に手間を見込んでいるのかが読めます。付いていなければ、工事費や工期が変わったときに設計料がどう動くのかを聞いてみる価値があります。

表がないのは、金額が自由だということではありません。説明の責任が、数えた側に来るということです。

内訳の紙が添えられた見積書と、総額だけが書かれた見積書が並んでいる

次は、計算の外側です。帳票、台帳、単価の更新。計算が合ったあとに残る仕事を並べます。


参照:官庁施設の設計業務等積算要領(令和6年改定・令和6年3月26日 国営整第210号)6.3/平成27年国土交通省告示第670号/工事監理業務における対象工事の工期が延長した場合の業務委託料について(令和8年3月27日 事務連絡)/設計業務委託等技術者単価(令和8年3月から適用)

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