設計料の計算ツールを、作りかけのまま見せる

タブは6つあります。押せるのは1つだけ。残りの5つは灰色のまま、まだ押せません。

これが、いま手元にある設計料の計算ツールの v0.1 です。

完成してから紹介するつもりでいました。でも、作り直しているうちに考えが変わりました。作りかけのまま見せて、1か所ずつ分解しながら直していく。そのほうが、このツールにとっても、読む人にとっても役に立つと思ったからです。

最初にお断りしておきます。これは試作です。算定に使う場合は、必ず基準の原文で確かめてください。直した跡は、このブログに残していきます。

目次

押せるのは、新築設計のタブだけ

ツールは、ブラウザで開くHTMLファイル1枚です。インストールもインターネットの接続も要りません。ファイルをダブルクリックすれば開きます。

根拠にしているのは、国の「官庁施設の設計業務等積算要領(令和6年改定)」だけです。以前の版は、ある地域の要領に合わせて作っていました。それを、どこで使っても同じ前提で確かめられるように、国の要領だけを根拠にして、新築設計から作り直しました。

自分の住んでいる県の要領と、ほかの都道府県の要領は、同じ決まりでそろっているものだと思っていました。調べてみると、そうではありませんでした。自分の勉強と復習も兼ねて、国の要領から考えを整理し直すことにしました。

いま動くのは新築設計のタブです。建物の類型と床面積を入れると、業務人・時間数と委託料が出ます。類型は要領の表どおり、第一号の車庫・倉庫から第十二号の公民館・図書館まで、第1類と第2類を合わせて21区分あります。

v0.1の画面全体。6つのタブのうち、新築設計だけが押せる

画面を、計算の順番に並べた

この版でいちばん考えたのは、画面の並べ方です。

以前の版は、入力欄を左にまとめ、結果を右に出していました。結果はすぐに出ます。でも、結果の数字を見ても、どの入力がどれだけ効いたのかは、そこからは見えません。

最初は、AIに聞きながら、HTMLでどう計算させるかを調べるところから始めました。業務の種類ごとに計算の考え方は違いますが、設計書に最後に出てくるのはどれも金額です。それなら、業務ごとにタブを分けて、計算の途中をブロックごとに見せようと考えて、いまの画面になりました。

v0.1では、画面を上から5つの段に分けて、計算の順番どおりに並べました。

  1. 建物の条件(類型と床面積)
  2. 業務人・時間数(全部を委託する場合)
  3. 頼まない業務を外す
  4. 追加業務
  5. 金額にする

計算する順番と、人が確かめる順番を同じにしています。数字が変わったら、上から順にたどれば、どの段で変わったかが分かります。各段の見出しの横には、根拠にした要領の条番号を小さく出しています。

5つの木の箱が上から下へ順に並び、一番上の箱にだけ部材が入っている

たとえば、事務所(第四号 第1類)の1,000㎡を、総合・構造・設備の全部を頼む条件で入れると、次のようになります。

段出てくる数字
2 業務人・時間数総合 1,169.15/構造 428.66/設備 327.89
合計1,925.70 人・時間
5 業務価格(千円未満切り捨て)24,706,000円
業務委託料(消費税込み)27,176,600円

単価は技師(C)の42,500円/日(令和8年3月から適用)、諸経費率1.1、技術料等経費率0.15の標準値のままです。

事務所1,000㎡を入れたときの算定結果。人・時間の内訳と費目ごとの金額

作りかけのまま出す理由

全部そろってから出すと、誤りを見つけられるのは自分だけになります。

以前の版では、係数表の行が1行ずつずれていたり、合計が1.00になるはずの率が1.01になっていたりしました。どちらも計算式の誤りではなく、表を写す段階の誤りです。それでもツールは、エラーを出さずに動いてしまう。使っているだけでは気づけません。

だから今回は、1タブずつ作り、作った分を分解して書き、書きながら見つけた誤りを直す、という順番にしました。

1枚の図面に、画面の端から何本もの手が伸びて、同じ一点を指している

最初の1タブで決めておいたこと

残りのタブも、この新築設計のタブと同じ骨組みを通ります。だから、最初の1タブで決めておいたことがいくつかあります。

計算の中身と画面を分けました。係数の表と計算の手順は1か所にまとめ、画面は入力を渡して結果を表示するだけにしています。表を確かめたいときに、見る場所が1か所で済みます。

端数の約束も1か所に書きました。人・時間は内訳ごとに小数第2位で丸め、丸めた値の合計で金額を計算する。表示している人・時間から、同じ金額に戻れるようにするためです。

そのうえで、コンピューターの小数の誤差にも手を入れました。2.80時間に5,312.5円を掛けると、14,875円ちょうどです。ところがコンピューターでそのまま掛けると、14,874.999…円になる。これを1円未満切り捨てにすると14,874円で、1円ずれます。

難易度係数は、自動では入れていません。告示の表に該当する建物かどうかは、建物ごとの判断だからです。分野ごとに入れる欄だけを用意して、標準は1.00にしてあります。

結果の下には検算の欄を置きました。業務価格から人・時間を逆に戻して、積み上げた値との差を出します。千円止めがあるので、差はゼロにはなりません。そこで「千円止めで離れうる上限」を並べて、差がその範囲に収まっているかを表示しています。上の事務所の例では、差は0.01人・時間、上限は0.08人・時間です。

検算の欄。戻した人・時間数、積み上げた値との差、千円止めで離れうる上限

単価は、設定画面の1か所で年度ごとに差し替えます。床面積が要領の適用範囲の外なら、警告を出します。

単価・年度の設定画面。技師(C)の日額と出典を1か所で差し替える

これから分解していくこと

ここからは、このツールを1か所ずつ分解していきます。

次は、床面積から業務人・時間数が出るところです。同じ類型でも、面積の区分によって計算式そのものが切り替わるところがあります。その後、頼まない業務を外す仕組み、人・時間を金額にする手順と続けて、灰色のタブを1つずつ押せるようにしていきます。

分解しているうちに誤りが見つかれば、ツールを直して、直したことも書きます。

自分の計算に当てはめるなら

これは設計料の計算に限った話ではないと思っています。自分の計算の道具に、3つ問いかけてみてください。

その計算は、上から順にたどれるように並んでいるか。担当が変わっても、同じ答えになるか。誤りを見つけてくれる人が、自分のほかにいるか。

3つ目は、道具を作りかけのまま人に見せるかどうかで変わります。完成してから見せる道具は、誤りを探す目が自分の分しかありません。作りかけで見せる道具は、読んでくれた人の分だけ、その目が増えます。


参照

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