設計料の「工事費の○%」が合うのは、小さな建物のごく一部だけ

建物を建てようとして設計事務所に相談すると、設計料は工事費の1割ちょっと、と言われることがあります。設計と監理を合わせて13%前後。ところが建設会社や住宅会社に行くと、「設計は込みです」と言われる。

13%払うか、ゼロか。同じ建物の設計なのに、この差はどこから来るのでしょうか。

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設計料の話をしない営業をしていた

私は以前、設計から施工までをまとめて請ける側で働いていたことがあります。営業にも出ていました。

そのころ、お客さんと設計料の話をした記憶はほとんどありません。言っていたのは「他社と違って、うちは注文設計なので、ご自分で決められます」。設計の価値は売っていたけれど、設計の値段は売っていなかったわけです。

では設計の分はどこに入っていたのか。工事の利益です。設計に単独で値段を付けるのではなく、工事全体で利益が出ればいい。デザインに凝った案件でもそうでない案件でも、設計部分はほぼ無償という感覚でした。

一方、設計事務所の設計料は、設計8%・監理5%、合わせて13%くらいというのが当時の私の肌感覚です。

13%と「込み」は、正反対に見えます。でもよく見ると、どちらも工事費を基準にしています。13%は工事費に掛ける率ですし、「込み」の設計も工事費から生まれる利益の中にある。工事費が大きくなれば設計に回るお金も増え、小さくなれば減る。違うのは、設計の値段が見えるか見えないかだけです。

設計の手間は、面積に比例しない

ところが、設計の手間は工事費に比例しません。

100㎡の建物でも、敷地を調べ、法規を確認し、打合せを重ね、確認申請を出し、図面を一式揃えます。この工程は、建物が小さいからといって省けません。面積が半分になっても、打合せの回数は半分にならないし、申請書類が半分になるわけでもない。実感としては、ある程度の大きさまでは、手間はほとんど変わらないと思っています。

国が設計料の算定方法として示している告示第8号にも、同じ性質が表れています。告示には、建物の用途と床面積ごとに標準的な業務量をまとめた表(略算表)が付いていて、単位は金額ではなく「人・時間」です。

事務所の場合、設計と工事監理等を合わせた標準の業務量は、100㎡で408人・時間、1,000㎡で2,680人・時間。面積が10倍になっても、手間は6.6倍にしかなりません。1㎡あたりに直すと、100㎡では4.1人・時間、1,000㎡では2.7人・時間です。私の実感ほど平らではないものの、向いている方向は同じです。

工事費は、おおむね面積に比例して増えます。手間は比例しない。それなのに設計料を工事費の○%で決めると、小さい仕事ほど手間に対して報酬が足りなくなり、大きい仕事ほど余ります。

仕事の大小が、そのまま報酬の大小になってしまうのです。

だから、民間の値付けはぶれる

工事費の○%で決めると、小さい仕事は割に合いません。そこで民間では、それぞれのやり方で補正をかけます。

設計事務所なら「設計料は○○万円から」と最低額を設ける。名前で指名される事務所なら、%とは関係のない言い値を付けることもある。設計施工なら、設計に値段を付けずに工事の利益の中へ混ぜる。

経費の見方も利益の取り方も、会社ごとに違います。どれも、その会社の事情としては筋が通っています。ただ、施主の側から見ると、「この額なら適正」と言える物差しがどこにもありません。

設計施工の「込み」も、手間が消えているわけではありません。後で見るとおり、150㎡の注文住宅でも、設計と監理の手間は告示の式で700万円を超えます。これを工事の利益の中で吸収するには、手間そのものを減らすしかない。間取りや仕様をある程度規格に寄せ、監理を社内で済ませる。無償に見える設計は、そうやって成り立っています。

告示の式には、工事費が一度も出てこない

では、告示第8号の式はどうなっているか。略算方法の式はこうです。

業務報酬 = 直接人件費 × 2.1 + 特別経費 + 技術料等経費 + 消費税相当額

直接人件費は、略算表の業務人・時間に人件費単価を掛けたものです。公共の発注では、この単価に国が毎年公表している技術者単価を使います。

この式のどこにも、工事費は出てきません。

ここが、%との決定的な違いです。%で決めると、仕上げのグレードを上げただけで設計料が上がります。手間は変わっていないのに。告示の式なら、用途と床面積が同じである限り、グレードを上げても設計料は動きません。

言い換えると、告示の式は設計料を「工事費の影」としてではなく、「手間の値段」として扱っています。

公共の式で並べてみる

実際に数字を入れてみます。条件は次のとおりです。

  • 業務量:告示第8号 別添三の略算表(標準業務をすべて実施、設計と工事監理等の合計)
  • 人件費単価:設計業務委託等技術者単価の技師(C)、42,500円/日(令和8年3月適用)を8時間で割ったもの
  • 特別経費・技術料等経費・消費税は含めない。つまり下限の目安です
  • 工事費は、工事単価(1㎡あたり)を仮に置いて面積を掛けたもの

まず事務所です。

延床面積設計+監理(公共の式)工事単価30万円/㎡40万円/㎡50万円/㎡
100㎡約455万円15.2%11.4%9.1%
300㎡約1,130万円12.5%9.4%7.5%
1,000㎡約2,990万円10.0%7.5%6.0%
3,000㎡約7,680万円8.5%6.4%5.1%
10,000㎡約2億1,800万円7.3%5.5%4.4%

右の3列は、公共の式で出た設計料を工事費で割って、%に直したものです。

次に、150㎡の戸建住宅です。告示では、戸建住宅は手のかかり方で類型が分かれています。

類型(150㎡)設計+監理(公共の式)工事単価25万円/㎡30万円/㎡
詳細設計を必要とする戸建住宅約710万円19.0%15.8%
その他の戸建住宅約430万円11.5%9.6%

13%が合うのは、ごく一部だけ

表を見ると、13%の肌感覚が公共の式と重なるのは、事務所なら100〜300㎡で工事単価が安めのところくらいです。

1,000㎡を超えると、公共の式は6〜10%。10,000㎡では4〜7%まで下がります。ここで13%を取れば、手間に対して倍前後の報酬になる。

反対に、詳細設計まで要る注文住宅は、公共の式でも16〜19%。13%では足りません。13%がちょうど合うのは、規格に寄せた住宅のほうです。

しかも、この表は技術料等経費などを入れていない下限です。実際の公共価格はもう少し上に来ます。

つまり、工事費の13%という相場は、大きい建物では取りすぎ、手のかかる小さい建物では足りない。ちょうど合うのは、小さな建物のうちのごく一部だけでした。

見積もりを見るときの物差し

とはいえ、公共の式をそのまま民間に持ち込めるわけではありません。経費の見方も利益の取り方も違う以上、「告示どおり払ってください」は民間では通じない。

それでも、物差しにはなります。

設計料の見積もりを比べるとき、%同士で比べても意味はありません。聞くべきなのは「この建物で、何人・時間の仕事を見込んでいますか」です。この問いに答えが返ってくる設計者は、手間から値段を組んでいます。答えが%しか返ってこなければ、その金額は工事費から逆算されたものです。

「設計込み」と言われたときも同じです。手間はどこかで払われています。無償に見えるなら、どこで手間を減らしているのか。規格に寄せる範囲はどこまでか、監理は誰がどこまでやるのか。それを聞いておけば、「込み」の中身が見えてきます。

設計料が13%で高いか安いかは、建物の大きさと手のかかり方を聞かないと答えられない。%は結果であって、根拠ではありません。


参照

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