設計を全部は頼まないとき、外すのは率ではなく業務

「基本設計だけ、先にお願いできますか」

事務所1,000㎡で、総合・構造・設備を全部頼むと1,925.70人・時間。基本設計だけなら505.65人・時間です。全体の26%になります。

前回は、床面積から「全部を頼んだときの手間」が出るところを分解しました。今回はその次の段、頼まない業務を外すところです。

目次

全部を頼む設計は、思ったより少ない

基本設計と実施設計を年度で分けて発注する。基本設計は別の事務所が済ませていて、実施設計から引き継ぐ。工事中の設計意図の伝達は、監理と一緒に別の契約にする。設計を最初から最後まで1本で頼む形ばかりではありません。

全部頼むことはそんなに多くないところですが、設計事務所との協議では、色んなことが打ち合わせで不足していたなと感じたところでした。

そのたびに、全部を頼んだときの手間から、頼まない分を引くことになります。

業務細分率という物差し

要領は、全部を頼んだときの手間を、業務ごとの割合に割った表を持っています。別表2-2の業務細分率です。

大きくは、基本設計・実施設計・設計意図伝達(工事の段階で設計者が行う業務)の3つ。その下に23の業務が並び、分野ごとに割合が付いています。事務所(第1類)でまとまりごとに足すと、こうなります。

業務のまとまり総合構造設備
基本設計(10業務)0.280.240.23
実施設計(11業務)0.560.610.61
設計意図伝達(2業務)0.160.150.16
合計1.001.001.00

1つで一番大きいのは「実施設計図書の作成」で、0.28〜0.30。構造と設備は、総合より実施設計の比重が重くなっています。

頼まない業務の割合を足したものが「対象外業務率」です。分野ごとに(1-対象外業務率)を掛けて、頼む分の人・時間を出します。割合の列は類で分かれていて、庁舎などの第2類は、第1類と少しずつ数字が違います。

仕切りで小・大・小の3つに分けられた木の浅い箱。真ん中の区画にいちばん多く木の駒が入っている

率を入れる欄を、なくした

前の版には、業務を外す入り口が3つありました。「基本+実施」などを選ぶプルダウン、対象外業務率を数字で入れる欄、閉じたパネルの中の23行のチェックです。

どれでも同じ結果に行けるようにしたつもりでしたが、プルダウンの率と、数字で入れた対象外業務率は掛け算でつながっていて、仕組みの上では二重に外せました。それ以上に困るのは、数字で入れた0.30が、後から見てどの業務を外した0.30なのか、誰にも分からないことです。

封をした箱に、何も書いていない白い札が下がっている。隣の蓋のない箱には中身が一列に並んで見えている

ここについては率計算だけをすればいいのかと思ってましたがまさかの、後任は細分率を積み上げて、1以上になってたりして誤差が大きかったことを覚えています。

作り直した版では、数字を入れる欄をなくしました。23行の表を常に開いておき、頼まない業務のチェックを外す。入り口はこの1つだけです。

よくある分け方は、ボタンを5つ置きました。全部/基本+実施/実施+意図伝達/実施のみ/基本のみ。押してもチェックが入れ替わるだけで、率は必ず表から足して出ます。

プルダウンだけにする案も考えましたが、やめました。確認申請の打合せだけ発注者側で持つ、といった1行単位の外し方が表せないからです。

業務細分率の表。基本設計の10行だけチェックが外れて取り消し線が引かれ、最下行の対象外業務率が総合0.28・構造0.24・設備0.23になっている

コードでは、足すだけ

計算の中身は短いものです。要領の表を、並びのまま23行×6列の配列で持ち、チェックを外した行だけを足します。

function exclusionRates(typeId, checked){
  const col = bmsColumn(typeId);           // 第1類なら r1、第2類なら r2
  return RULES.DISC.map((d, i) => {        // 総合・構造・設備
    let off = 0;
    RULES.BMS.forEach((it, n) => {
      if (!checked[n]) off += it[col][i];  // 外した業務だけ足す
    });
    return { disc: d.id, excl: r2(off) };
  });
}

一般業務の人・時間は、全部を頼んだときの人・時間 × 難易度係数 ×(1-対象外業務率)。画面の側は、この表をそのまま描いて、外した行に取り消し線を引くだけです。

5つの分け方を並べる

事務所1,000㎡、第1類で、5つのボタンを順に押してみます。金額は技師(C)、諸経費率1.1、技術料等経費率0.15で出した参考値です。

分け方業務人・時間数全部に対する割合業務価格(参考)
全部1,925.70100%24,706,000円
基本+実施1,621.8884%20,808,000円
実施+意図伝達1,420.0574%18,218,000円
実施のみ1,116.2158%14,320,000円
基本のみ505.6526%6,487,000円

基本設計は、3割に届きません。

なかなか実務では基本設計を頼むということは今では少なくなりましたが、既存ストックの活用も今後は建替えへと検討されるものになってきて基本設計も重要になってきたと思っています。

並べて気づいたことが1つあります。基本のみ(505.65)と実施のみ(1,116.21)を足すと1,621.86。基本+実施をまとめた1,621.88と、0.02だけずれます。金額にすると、分けた合計が20,807,000円、まとめると20,808,000円です。

分野ごとに小数第2位で丸め、千円止めを2回通るので、分けると端数の出方が変わります。差は小さいのですが、「分けて発注した合計が、まとめた場合と合わない」と聞かれたときに、理由を言えるかどうかは別の話です。

外しても、使われ続ける率

業務細分率は、外すときだけの数字ではありません。追加業務の積算業務は、「実施設計に係る人・時間 × 0.25」で数えます。この実施設計の分は、全部を頼んだときの人・時間に、実施設計の細分率の合計を掛けて出します。事務所1,000㎡の総合なら、1,169.15 × 0.56 × 0.25 = 163.68人・時間です。

表を1回写せば、2か所で使われる。写し間違いも、2か所に効きます。

表を写したら、列を足す

この表は、要領のPDFからAIに配列へ写してもらいました。そのあと、6列それぞれの合計が1.00になるかを確かめています。

前の版では、ここが1.01になっていました。原文では2つの業務が結合したセルで0.01を共有していたのに、それぞれに0.01を割り当てていたためです。写した数字を1行ずつ目で追っても気づけませんでしたが、列を足すと一発で出ました。

古い計算機から伸びる紙テープと、列だけが引かれた帳簿の上を鉛筆でなぞる手元

AIには業務細分率のPDFを参照させて率の積み上げができるか確認させました。

作り直した版では、6列すべてが1.00になることを確認しています。

自分の見積に当てはめるなら

業務の一部だけを頼んだ、または受けた見積を1つ開いてみてください。

そこに残っているのは、外した業務の一覧ですか。それとも、率だけですか。

率は結果で、根拠は業務の一覧のほうです。一覧が残っていれば、誰が見ても同じ率に戻れます。頼む側なら、「基本設計の○割で」と言われたとき、どの業務を外した割合かを聞いてみる価値があります。

次は、この人・時間を金額にするところを分解します。


参照:官庁施設の設計業務等積算要領(令和6年改定・令和6年3月26日 国営整第210号)別表2-2、第2章2.3/設計業務委託等技術者単価(令和8年3月から適用)

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